診療・各部門
腎臓病のお話し
慢性腎臓病について
慢性腎臓病は、CKD(Chronic Kidney Disease)と略されることもありますが、「腎臓が老廃物を尿に排出する機能が低下して老廃物が体内にたまっている状態」もしくは「尿に蛋白が異常に漏れ出ている状態」が続いている病気です。
日本腎臓学会のCKD診療ガイド2024によると、日本の慢性腎臓病の患者数は2,000万人(成人の5人に1人)と推計されており、高血圧症に次ぐ新たな国民病として注目されています。慢性腎臓病が早期の段階では日常生活に苦痛が伴わないため 深刻な問題として受け止めにくいかもしれません。しかし、病状が進行して腎機能(=腎臓が老廃物を尿に排出する機能)が低下した場合、腎機能を回復させることが困難なことや、腎機能低下がひどい状態になって初めて「気持ち悪さ」「だるさ」「息苦しさ」といったつらい症状が大きな問題となるため、慢性腎臓病となった方は自覚症状が無くても早期の段階から将来を見据えて病状が進行しないように適切な治療(適切な投薬や食事)に取り組む必要があります。急性の脱水や尿閉などの一部の例外を除いて、基本的に破壊された腎臓は再生しないため、腎機能低下が進まないように、腎臓を保護する治療が必要です。どのような病気にも言えることですが、慢性腎臓病においても早期発見・早期治療が重要で、腎機能の低下がそこまで進んでいなくても、経過観察でよい「軽症」ではなく、治療が必要な「早期」と認識することが重要です。
慢性腎臓病と尿蛋白・高血圧の密接な関係
慢性腎臓病の原因は様々ですが、よくある原因として糖尿病・高血圧・腎炎が挙げられます。またどのような原因であっても、尿に異常に漏れ出ている蛋白すなわち「尿蛋白」が多いとそれだけで、年月が経つにつれて必ず腎機能が低下していくことが問題となります。
腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の塊があり、これがいわゆるフィルターの役割を果たして血液中の不要な老廃物、余分な電解質や水分を尿として排泄し、血液をきれいにする役割があります。上記のような病気によって糸球体(毛細血管)にダメージが加わると、本来血液中に留まっているはずの物質が尿中に漏れ出ます。これによって尿蛋白や尿潜血が出現します。(コーヒーのペーパーフィルターにハサミや針で穴をあけると、コップにコーヒーの粉が漏れ出てしまうようなイメージです。)
特に糖尿病は尿蛋白が増えてしまうと、その原因となった糖尿病の治療をしっかり行っても尿蛋白を正常に戻すことはできません。糖尿病と高血圧を両方持病としてお持ちの方は多く、このような蛋白尿で慢性腎臓病となった方の重要な治療が血圧のコントロールになります。収縮期血圧(いわゆる「上の血圧」です)が140以上ですと、血圧が高ければ高いほど尿蛋白は増えてしまい(穴の開いたフィルターに圧をかけてコーヒーを淹れているような状態です)、その状態を放置すると短期間(ひどい場合は1~2年)で透析が必要な進行した慢性腎臓病になってしまいます。一方で適切な薬を選択してもらい、決まり通りにしっかりと薬を内服し、減塩などの食事療法なども行って家庭での収縮期血圧が125 mmHg未満で維持できれば、患者さんによっては透析が必要な病状となることを年単位で避けることも可能となります。
高血圧だけで慢性腎臓病が発生することもあります。腎臓に流れ込む血液の通路である動脈の壁が厚くなり、血液の通路が狭くなること(「動脈硬化」にあたります)で腎臓の老廃物排泄機能の効率が悪くなってしまうためと考えられています。このタイプの慢性腎臓病は、尿蛋白の増加はわずかであるため尿蛋白による腎機能の悪化は発生しませんが、高血圧がひどいと動脈硬化の進行も早くなりますので、やはり家庭での収縮期血圧を125 mmHg未満で維持できるよう治療を行い、動脈硬化ひいては慢性腎臓病の発症・進行をくい止めていくべきことには変わりありません

腎炎は何らかの免疫異常で、自身の身体の組織であるはずの腎組織が自身の免疫に攻撃されてしまい、腎組織に炎症が発生している状態にあたります。炎症によって腎臓の組織構造が破壊されることで腎機能が低下することと、組織構造が破壊され発生する蛋白尿の影響で更に腎機能が悪化していくことが問題です。このような腎炎に対しては、血圧コントロールによる尿蛋白抑制治療だけでなく、ステロイドをはじめとした免疫抑制薬によって腎臓の炎症を沈静化させることが有効な治療となる場合がありますので、そのような治療が有効かどうか事前に評価するためにも、腎生検を行って腎臓の組織構造を直接顕微鏡検査で確認し、正確な診断をつけることが重要です。健診などで尿潜血と尿蛋白がともに陽性であった場合や糖尿病ではないのに尿蛋白が陽性であった場合は腎炎である可能性がありますので、まずは腎臓内科医の診察を受け、本当に腎炎が疑わしいのか、確定診断のために腎生検を行うべきなのかといった相談をされることをお勧めします。
以上のように、またその他稀な慢性腎臓病の原因である場合も含め、高血圧の治療にも精通した腎臓内科医の管理を受け、効果的に尿蛋白を減らす治療をしっかりと行いながら 原因に応じた追加治療を適切に継続していくことが慢性腎臓病の中心的な治療となります。
慢性腎臓病が進行してしまった場合
慢性腎臓病となった場合まずは早期のうちから進行を予防することが最も重要ですが、それに取り組んでもなお非常に長い年数の経過を経て腎機能低下が進行してしまい 、末期腎不全の状態となると「気持ち悪さ」「だるさ」「息苦しさ」「むくみ」といったつらい症状がみられます。(尿毒症と呼ばれます。)腎機能低下が進行した場合は、ご自身の腎臓の代わりとなる治療(専門的には「腎代替療法」と表現されます)のサポートが必要となります。腎代替療法には血液透析、腹膜透析、腎移植があり、それぞれに違った長所・短所となり得る特徴があります。
血液透析は、わが国で最も多く方が受けられている腎代替療法で、主には専門の施設内で週に3回 毎回3~4時間程度の時間をかけて、体外に取り出したご自身の血液を専用の機械で浄化処理後 体内に戻す治療を継続していくものです。自宅からの通院が頻回に必要となったり、治療時間の拘束が比較的長いなどといった短所はありますが、腎代替療法を必要とするほとんどの方に対応可能で医療ケアをこまめに受けるメリットがある治療方法です。また通院での血液透析を受ける上で、大量の血液を体外に出し入れしていくため血管に関連する手術が通院透析の前に必要となります。代表的なものには前腕の動脈と静脈を繋げて静脈に大量の血液を流す内シャントがあります。これ以外にも人工血管、上腕動脈表在化、長期留置型カテーテルがあり、患者さん毎にメリットとデメリットを勘案して術式を決定します。

腹膜透析は、ご自身のお腹の中へ専用のカテーテルを手術で挿入・留置し、そのカテーテルを使用してお腹の中へ透析液を貯留・注排液させながら、その透析液を使用して尿のかわりに老廃物を体外に排泄させていく腎代替療法です。月に1~2回の通院は必要ですが、毎日4回ほど必要となる透析液の注排液操作(1回あたり15分程度)を確実にできるようであれば、自宅や職場などの場所で ご自身だけで治療ができる、血液透析より自由度が高い治療方法です。ただし、血液透析に比べ塩分や水分の処理能力は劣る治療方法のため、十分塩分を制限した食事の自己管理が腹膜透析継続のためには必須です。

腎移植は、移植する腎臓が限られ実際にこの治療が受けられる方の数が少ないことや、移植手術という大手術が必用であること、移植した腎臓を拒絶反応から守るため免疫抑制薬の内服が必須となった結果 自身が感染症にかかりやすい免疫抑制状態となること、といった制約があるものの、概ね正常な水準まで腎機能が回復し、食事や生活の上での制限事項がほとんどなくなるという大きなメリットのある腎代替療法です。
主には上記3つの腎代替療法を、ご自身の体質・体調・ライフスタイル・生活環境などにあわせて、場合によっては治療方法を組み合わせたり変更させたりしながら継続していくこととなります。
いずれの治療法も手術が必要となります。血液透析と腹膜透析については出来る限り尿毒症の症状が出現するであろう時期の直前に手術を受けておくことが合併症予防の観点からも重要です。当院では腎移植を実施しておりませんので、腎移植をご希望の方は関連施設にご紹介させていただきます。担当医師とよくご相談ください。
腎炎が原因のネフローゼ症候群について
ネフローゼ症候群とは血液から尿に漏れた蛋白(=尿蛋白)の量が極めて多いため、血液の蛋白が不足し、結果として様々の病的状態(浮腫・脂質異常症・血液凝固異常)が発生している病状のことをいいます。浮腫がひどい場合は肺の内外に水分が溜まりやすく肺水腫による呼吸不全を、脂質異常症は動脈硬化を、血液凝固異常のため脳梗塞・心筋梗塞・肺や腸の塞栓症を、と数々の取り返しのつかない新たな疾患を招くものとしてネフローゼ症候群は非常に厄介な病状と考えられています。もちろん大量の尿蛋白は、腎機能を低下させ慢性腎臓病の悪化も引き起こします。
ネフローゼ症候群の原因は様々ですが、慢性腎臓病の原因のひとつでもある腎炎にも特別尿蛋白が増加しやすいタイプの腎炎があり、これはネフローゼ症候群の原因となります。このような腎炎が原因のネフローゼ症候群は 免疫抑制薬による治療により尿蛋白が完全に正常化する場合もあり得るため、ネフローゼ症候群の中でも治療意義の大きいタイプと言えます。
「糖尿病が持病としてないにもかかわらず、数週~数か月の期間でむくみが急に現れ、トイレにたまった尿の泡立ちが目立つ」「健診で尿蛋白が強陽性だった」「風邪のような症状に加えて、またはそのあとに血尿やむくみが出た」などという状況になったら、腎炎が原因のネフローゼ症候群である可能性が高いので、なるべく速やかに腎臓内科医の診察を受け、腎生検で正確な診断をつけた上で適切な治療を受けるようにしましょう。
当院の腎臓内科について
診療内容および特色
- 無症候性の蛋白尿・血尿の精査から、慢性腎臓病の診療、腎炎・ネフローゼ症候群の診療、急性腎障害などの腎疾患全般の診断・治療を行っております。また、体液・水・電解質異常・高血圧も専門です。
- 必要時の腎生検も含めて総合的に診断を行い、慢性腎臓病の進行予防・抑制を主体に、栄養士による個別栄養相談を含めてきめ細かな対応をめざしています。また、透析に至るような場合には、透析導入や外来維持透析も行い、腎疾患に関する総合的な診療を行っています。
- 腎代替療法について、当院では血液透析および腹膜透析の診療を行っています。透析室(血液透析用ベッド数23床)では月~土曜日、毎日2クール(午前・午後)ずつ、入院中の透析だけでなく 通院透析も行っています。夜間透析は行っておりません。入院病棟も併設された透析施設のため体調不良時の精密検査、各専門科へのご紹介、入院対応も迅速に可能で、安心して通院いただくことができます。
- 腎代替療法として腎移植をご希望の方は、連携している大学病院(横浜市立大学附属市民総合医療センター)やご希望の施設にご紹介をさせていただいております。
- 必要時は専門の血管外科と連携し、シャントPTA(シャント血管の内側から膨らませた風船の力で、シャントの不調の原因となっている狭窄部位を拡張させる治療)、シャント再建手術も行っています。
- 地域のクリニックとの連携を密にし、地域医療の拠点として皆様の健康増進に役立っています。
医療機関の皆様へ
当院腎臓内科は
- 腎機能低下、蛋白尿、血尿の原因精査
- 病態進行抑制を目的とした治療介入と強化:治療抵抗性の蛋白尿(顕性アルブミン尿)、腎機能低下、高血圧症に対する治療の見直し、二次性高血圧症の鑑別など
- 保存期腎不全の管理、腎代替療法の導入
を行うことによって、
- 一般的なCKDの診療範囲ではない専門的な腎疾患(IgA腎症、血管炎、膠原病関連・腫瘍関連・遺伝性腎疾患など)の発見
- 腎予後もしくは生命予後の改善
- 腎予後が不良な患者様には適切でスムーズな腎代替療法の導入と維持管理
を達成し、腎臓・高血圧領域でQuality of Life(生活の質)の保たれた寿命の延伸を目指します。
参考として「横浜市CKD連携協議会」の紹介基準、治療/紹介フロー、CKD治療の基本方針を下記にお示し致しますのでご活用ください。
(横浜市CKD連携協議会 http://hamamed.jp/member/ckd/ より引用.)
診断や病態評価に有用となりますので、ご紹介の際には、紹介状に加え、出来る限りで構いませんので過去の採血・採尿・画像検査等を合わせて添付いただけますと幸いです。
主な検査・治療
| 検査・治療名 (外来で可能なもの) |
検査・治療名 (入院が必要なもの) |
|---|---|
| 血液透析 | 腎生検 |
| 腹膜透析 | 透析導入 |
| アフェレシス療法(血漿交換、吸着療法、CART等) | |
| シャント造設・シャント再建・シャントPTA |
主な検査・治療の成績
| 主な実績 | 2024年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 透析導入 | 19件 | 21件 | 24件 | 25件 | ||
| 年間透析回数 | 入院 | 1,353回 | 1,215回 | 1,450回 | 1,328回 | |
| 外来 | 9,476回 | 9,903回 | 10,759回 | 10,958回 | ||
診療スタッフ
| 職名 | 氏名 | 特に専門としている領域 | 認定医等 |
|---|---|---|---|
| 部長 | 中森 悠 | 腎臓・高血圧 |
日本内科学会 認定内科医 |
| 医師 | 藤本 裕俊 | 腎臓・高血圧 | 日本内科学会 認定内科医 日本腎臓学会 腎臓専門医 横浜市障害者福祉法第15条指定医 難病指定医 |
| 医師 | 中山 泉 | 腎臓内科 |
日本内科学会 内科専門医 |
| 医師 | 鳴田 直樹 | 腎臓内科 |


