内科(糖尿病・代謝内分泌内科)

診療・各部門

糖尿病とは

糖尿病は血液中に流れるブドウ糖の量が過剰になる状態、すなわち血糖値が高くなってしまう病気です。ほとんどの糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病のいずれかに分けられます。

1型糖尿病は糖尿病全体の数%と発症率は低いですが、主に若年者に突然発病することが多い糖尿病です。1型糖尿病は膵臓のβ細胞の破壊により、そこから分泌され血糖値を下げる体内随一のホルモンであるインスリンの分泌量が極度に低下することにより発症します(絶対的インスリン量低下)。残存するインスリンの分泌量や発症後の進行する速度により、劇症1型糖尿病(およそ1週間以内で発症)、急性発症1型糖尿病(数ヶ月程度で発症)、緩徐進行1型糖尿病(半年〜数年、時に10年以上経て発症)に分類することができます。

2型糖尿病は日本の糖尿病全体の約95%を占め、中高年の方に多い糖尿病です。糖尿病を発症する要因には遺伝的要因と環境的要因がありますが、2型糖尿病の場合は複数の遺伝因子に過食、運動不足といった環境因子が加わって発症するとされています。2型糖尿病は膵臓のβ細胞から出るインスリンの作用不足、すなわち①インスリン分泌は保たれているものの血糖を下げるには不十分(相対的インスリン量低下)、あるいは②インスリン量は十分または過剰であるものの血糖を下げる効果が発揮されない(インスリン抵抗性)のいずれかが原因で発症します。①はやせ形、②は肥満の方に見られる事が多い糖尿病です。

糖尿病の検査

糖尿病はいくつかの検査値を組み合わせて診断します。代表的な検査としては以下があります。

  • 空腹時血糖
    朝食前に測定した血糖値です。126mg/dl以上で糖尿病型と診断します。
  • 随時血糖値
    食事時間と無関係に測定した血糖値です。200mg/dl以上で糖尿病型と診断します。
  • 75gOGTT
    空腹時に75gのブドウ糖の溶けた水分を飲み、30分後、1時間後、2時間後の血糖値を測定します。2時間後の血糖値が200mg/dl以上で糖尿病型と診断します。
  • HbA1c:ヘモグロビン・エーワンシーと呼びます
    赤血球の中のヘモグロビン(赤い色素)にブドウ糖が結合したもので、1-2か月の血糖変動を反映します。6.5%以上で糖尿病型と診断します。
  • 尿検査
    尿糖を検査します。血糖値が160-180mg/dlを超えると糖が尿中に出る(血液中から尿中に溢れ出る)とされています。

糖尿病の治療

1型糖尿病では、自己免疫反応の異常等により膵臓のβ細胞からのインスリンを分泌(内因性インスリン)することが困難となるため、インスリンを補充(外因性インスリン)するための注射療法が基本となります。

2型糖尿病の治療としては、食事療法、運動療法といった生活習慣の改善を基本とし、改善が十分でなければ薬物療法を追加します。薬物療法は、経口血糖降下薬(内服薬)と注射薬に大別できます。経口血糖降下薬には7種類(ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬)、注射薬はインスリンとGLP-1受容体作動薬の2種類があり、これらを個々の患者さんの状態に応じて選択してていきます。2型糖尿病でもインスリンを分泌する能力が低下している方、長期間高血糖の状態が継続していた方、糖尿病罹病期間が長い方などはインスリン療法が必要になってきます。

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インスリンはペン型の注射器を用いて1日1〜5回注射する方法が主ですが、ポンプを用いて持続的にインスリン注入する方法もあります(下記参照)。また最近では、経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬の中には週1回の投与で効果がある薬剤なども出てきています。

但し、いくら薬を内服し、インスリンを注射しても、基礎となる生活習慣の改善が疎かであれば、良好な血糖コントロールは得られません。そのため、糖尿病に対する正しい知識を身に着け、規則正しい生活習慣を実践していくことが肝要です。

糖尿病の合併症

A.急性合併症
短期間(数ヶ月以内)での急激な血糖上昇の場合、症状(口渇、多飲多尿、体重減少等)を伴うことがります。一部には高度の脱水や意識障害などを伴う、糖尿病性ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群とった危険な合併症を起こすことがあり、これらは緊急入院して治療する必要があります。

B.慢性合併症
逆に軽度の血糖レベルの上昇であったり、数年かけて徐々に血糖レベルが上昇してくる場合は、症状(口渇、多飲多尿、体重減少等)が軽微、或いは無いまま経過することもあります。このような慢性的な高血糖状態が継続すると全身の血管に障害が起こります(血管合併症)。例えば、①細小血管合併症では、a.神経障害、b.網膜症、c.腎症があり、進行するとそれぞれ、足壊疽からの下肢切断、失明、透析導入に至りますし、②大血管合併症では、血管の動脈硬化が進み閉塞してしむことによって起こる、a.脳梗塞、b.心筋梗塞といった突然死のリスクのある病気に繋がります。その他にも、認知症、歯周病、骨粗鬆症、悪性腫瘍など合併症は多岐に渡ります。この慢性合併症は自覚症状に乏しいため、健康診断等で糖尿病と指摘されても放置してしまうことがありますが、これら合併症を防ぐためにも早期発見、早期治療が重要であり、医療機関を定期的に受診することが重要です。

血管のイラスト

当科で診療しているその他の代謝・内分泌疾患

  • 脂質異常症
    高コレステロール血症(家族性高コレステロール血症を含む)、高中性脂肪血症、HDL-C異常(低・高)
  • 肥満症・メタボリックシンドローム
    BMI(Body Mass Index:体格指数)= 体重(kg)÷身長(m)2で計算し、日本では25以上で肥満、35以上で高度肥満と定義されます。
    肥満症は、肥満と判定されたうち、肥満に起因ないし関連して発症する健康障害の予防および治療のため、医学的に減量が必要な病態と定義されます。
    メタボリックシンドローム(いわゆるメタボ)は、内臓脂肪の過剰蓄積(腹部肥満:ウエスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上)を基盤に、①空腹時血糖高値、②血圧異常、③高中性脂肪 のうち2つ以上を合併した状態で、動脈硬化性心血管病のリスクの高い状態を指します。
    当科では、高度肥満である肥満症の方に対する減量目的の2週間または4週間の入院を受け入れています(肥満症減量入院)
  • 甲状腺機能異常(バセドウ病・橋本病)
    甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症(橋本病)は頻度の高い内分泌疾患
    です。バセドウ病では多くの場合内服薬による治療が有効ですが、一部には放射線療法や外科療法を選択される方がいます。橋本病では、甲状腺ホルモン製剤の内服調整をしていきます。
  • 下垂体・副腎疾患
    先端巨大症、下垂体機能低下症、クッシング症候群など

糖尿病・代謝内分泌内科の紹介

    1. 当科の入院方法
      1. 血糖コントロール入院(症例により10日~2週間前後)
      2. 教育パス入院(予約入院:金曜~翌々週金曜の2週間で固定):糖尿病チームが主導して合併症のチェック、栄養指導、ジムの運動療法、内服薬やインスリンの導入・調整を進め、血糖コントロール改善を目指します。
      3. 短期体験入院(3連休や年末年始など休日を利用):食事療法を学び、血糖変動チェックを行って現状を把握します。(注:入院中にコントロール改善や治療法決定を目指すものではありません。)
    2. 毎月2回(開催は午後)糖尿病教室を行っています(事前申し込みは不要)。糖尿病チーム(医師、栄養士、臨床検査技師、理学療法士、薬剤師、歯科衛生士等)が担当し、糖尿病についてやや踏み込んだ内容の講義を行います。
    3. 自己血糖測定(SMBG)や持続血糖モニタリング(CGM:2週間の数分毎の血糖を自動で測定)を用いたインスリンや経口血糖降下薬の調整も行っています。

      CGMによる一日血糖の流れ

    4. 高度肥満(BMI>35が目安)の方の肥満症外来、健康障害を伴う肥満症の減量目的の入院も行っています。(美容目的のための減量には対応していません)
    5. 合併症のチェックとして眼底検査、負荷心電図、心エコーなどの循環器検査、ABIやMRAなどの末梢血管の検査、腹部エコーなど併存疾患(特に膵癌などの悪性腫瘍)のスクリーニングが可能です。CTによる内臓脂肪面積の測定も可能です。

      CGMによる一日血糖の流れ

      インスリンポンプ療法とは

      インスリンポンプのしくみとインスリン注射療法との比較

      インスリンポンプ療法のインスリン効果イメージ

    6. 合併症のチェックとして眼底検査、負荷心電図・心エコーなどの循環器検査、ABIやMRAなど末梢血管の検査、腹部エコーなど併存疾患(特に膵癌などの悪性腫瘍)のスクリーニングが可能です。CTによる内臓脂肪面積の測定も可能です。
    7. 高度肥満(BMI≧35が目安)の方の減量目的の入院も行っています。
      肥満症の減量入院については、こちらをご覧ください。

      肥満症の治療

    8. 高コレステロール(家族性高コレステロール血症を含む)、高中性脂肪などの脂質異常症の治療に難渋されている方の治療も受け付けています。
    9. 糖尿病外来の枠が限られていることもあり、重篤な合併症などの事情がなく、経過が安定している方は、当院と連携する近隣クリニックへの逆紹介をお願いしております。
    10. 当院の糖尿病チームのご紹介
      個々の患者さんの病態・生活背景をチームスタッフがきめ細かく分析し、患者さんと向き合いながら良い治療・指導を見つけていきます。

糖尿病チーム医療

  1. 当院は肥満症治療薬ウゴービ®を処方可能な医療機関です。→詳しくはこちら

診療スタッフ

職名 氏名 特に専門としている領域 認定医等
診療部長 下条 正子 糖尿病
内分泌疾患

日本内科学会 総合内科専門医
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・評議員
日本医師会 認定産業医
医学博士
神奈川県難病指定医

医長 宮下 大介 糖尿病 日本内科学会 認定内科医・指導医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
日本内分泌学会・日本糖尿病学会(新内科専門医制度)
内分泌代謝・糖尿病内科領域専門研修指導医
神奈川県難病指定医
小児慢性特定疾病指定医
緩和ケア講習会修了
医師 川野 浩和 糖尿病 日本内科学会 内科専門医
医師 富谷 蒼 糖尿病

外来診療担当表